こんにちはー!
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回はGPIFから学ぶ投資の大原則を紹介したいと思います。
GPIFとは何か
GPIF(Government Pension Investment Fund)とは年金積立金管理運用独立行政法人の略称です。
将来の年金給付のために積立金を運用する組織です。
運用総資産額はおよそ160兆円。(2020年度第1四半期末現在)
日本の一般会計の国家予算が約100兆円です。
GPIFの運用資産額がいかに大きいかわかりますよね。
そのため、世界最大の機関投資家とか市場のクジラと呼ばれることもあります。
GPIFの収益
2001年度以降の累積収益は次のグラフのとおりです。
運用期間にはリーマンショックやコロナショックを含みます。
その中でも約70兆円もの収益をあげているのですから運用は成功しているといっても過言ではないと思います。
なぜもっと高リターンを目指さないのか
先ほどのグラフにあるとおり年率の収益率は2.97%です。
ところで、ポートフォリオは次のようになっています。
鋭い読者なら次の疑問を持つことでしょう。
株式の長期リターンは2.97%より高いでしょ。将来年金をたくさんもらえたほうがいいはずだから、もっと株の比率を高めればいいのに。
確かに株式の長期リターンは現在の収益率より高いと思います。
また、できることなら年金はたくさん受け取りたいですよね。
しかし、GPIFに明確な役割と目標があるので、このポートフォリオが最適なのです。
GPIFの役割と目標
GPIFの役割
GPIFの役割は積立金を安全に運用し将来の年金給付役立てることです。
日本は他の国と比べて少子高齢化が進んでいます。
将来の年金給付を保険料だけで賄うと、保険料の引き上げや給付水準の引き下げが余儀なくされます。
そこで、現在、支払われた保険料のうち使われなかった分を積み立てています。
この積立金を運用するのがGPIFです。
概ね100年後に年金給付の1年分程度の積立金が残るように積立金を活用していくことになっています。
そして、積立金の運用は安全に行うことが法律によって定められています。
第二十一条 厚生年金保険法第七十九条の三第一項の規定に基づき寄託された積立金(以下「厚生年金積立金」という。)及び国民年金法第七十六条第一項の規定に基づき寄託された積立金(以下「国民年金積立金」という。)の運用は、次に掲げる方法により安全かつ効率的に行われなければならない。
出典:年金積立金管理運用独立行政法人法(平成十六年法律第百五号)
GPIFの運用目標
GPIFには明確な運用目標があります。
先に触れた役割を果たすために厚生労働大臣から次のように要請を受けているのです。
年金積立金の運用は、厚生年金保険法第2条の4第1項及び国民年金法第4条の3第1項に規定する財政の現況及び見通しを踏まえ、長期的に年金積立金の実質的な運用利回り(年金積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたものをいう。)1.7%を最低限のリスクで確保することを目標とし、この運用利回りを確保するよう、年金積立金の管理及び運用における長期的な観点からの資産構成割合(以下「基本ポートフォリオ」という。)を定め、これに基づき管理を行うこと。その際、市場の価格形成や民間の投資行動等を歪めないよう配慮すること。
出典:年金積立金管理運用独立行政法人中期目標令和2年3月6日付厚生労働省発年 0306 第7号指示
要約すると、賃金上昇率を1.7%上回る利回りをできるだけ安全に確保しなさいということですね。
ところで、何故賃金上昇率を上回るように要請されているのでしょうか?
それは、賃金上昇率に連動する年金の、収支のバランスをとるためです。
公的年金の役割の一つに実質的な価値の保証が挙げられます。
年金額は物価や賃金のスライドに応じて支給されるということですね。
賃金が増えれば年金額も増えるということになります。
とすると、積立金の運用収益が賃金上昇率を上回っていれば年金財政にとってプラスになりますよね。
極端なことを言えば、GPIFの運用利回りが▲1%でも賃金上昇率が▲2%ならばその差は1%です。
マイナスの運用利回りでも年金財政にとってプラスなのです。
一方、積立金の運用収益が賃金上昇率を下回ると年金財政にとってマイナスになります。
したがって、GPIFが長期的に年金財政の安定に貢献するには賃金上昇率を上回る利回りを確保する必要があるのです。
そして、それを最低限のリスクで実現するために投資先を国内外の株と債券に分散しているのです。
なお、GPIFの実質運用利回りは次のようになっています。
賃金上昇率を上回りきっちり年金財政に貢献していますね。
GPIFに学ぶ投資の大原則
クイズ
さて、本題である大原則の紹介の前にクイズです。
オレンジが一個あるとします。
あなたはそれを、Aさんと二人で分けることにします。
どのように切り分ければ互いに納得するでしょうか?
似たようなクイズを聞いたことがある人ならこう答えると思います。
どちらかが半分だと思うように切り、切ってない人が先に取る、と。
確かに、切る人が露骨に片方を大きくすれば、切ってない人がそちらをとるため、切る人は真剣に半分になるように切るはずです。
この答えもいいのですが、不十分だと考えます。
先ほどのクイズに情報を足しましょう。
あなたはオレンジの果実を食べたいと考えています。
一方、A氏はマーマレードを作りたくてオレンジの皮が欲しいとします。
どうでしょうか?
先ほどの答えにならず、果実と皮を切り分けるという答えが出てくると思います。
情報が加わる前と後で何が変わったのでしょう?
それは目的が明確になったかどうかです。
多くの人は情報が加わる前はこう考えたと思います。
オレンジの量が多いほうがいいはずだから、いかにして同量のオレンジに切り分けられるか重要である、と。
一方、情報が加わった後ではお互いの目的がはっきりしたため、果実と皮を切り分ける答えが出てきたのだと思います。
このように目的が定まらないと適切な手段はとれないのです。
投資には目的がつきもの
投資についても同じことが言えると思います。
投資の目的がはっきりしないと適切なポートフォリオが決められないのです。
既に紹介したとおり、GPIFは運用目標がはっきりしています。
将来の年金給付に資するために積立金を安全に運用すること、具体的には賃金上昇率を上回る利回りを最低限のリスクで確保することでしたね。
そのためのポートフォリオが国内外の株と債券に均等に投資をするというものなのです。
もし、明確な運用目標がなかったら、過度にリスクをとり運用に失敗し、年金財政に寄与できないかもしれません。
もうおわかりですね?
そう、GPIFに学ぶ投資の大原則とは目的をもって投資をすることです。
ちなみにわが家の投資目的はざっくり次のようになっています。
現役世代のお小遣いと老後の収入を確保すること
30歳から本格的に投資を始めて、65歳の年金受給時まで35年と十分に投資時間を確保できます。
同時に35年後もの時間があると言うことはインフレを考えないといけません。
そこで長期的なリターンが高くインフレに強い株式か同じくインフレに強い不動産が投資先の候補に挙がりました。
また、資産が目減りするなかで上手く資産を売却し疑似配当とする自信がありませんでした。
プロの投資家でもないので使えるお金は少ないし時間もそこまでかけてられません。
その中で、白羽の矢が立ったのが米国の高配当ETFであるSPYDとHDVだったのです。
まとめ
- 目的が定まらないと手段は決められない
- GPIFは明確な投資目的がある
- だから適切な手段(ポートフォリオ)を選択できる
- 個人投資家も投資の目的をはっきりさせて投資をしよう
以上、GPIFに学ぶ投資の大原則でした。
GPIFには他にも個人投資家が学ぶべきことが豊富にあります。
その辺のことは別の記事にできたらいいなと思っています。
それではこの辺で失礼します。
またよろしくお願いしまーす!