米国株といったらジェレミー・シーゲル教授の「株式投資の未来」という本が有名ですよね。
今回は「株式投資の未来」に学び、わが家で採用しているHDVとSPYDの組み合わせが高いポテンシャルを持つ理由について語りたいと思います。
シーゲル教授とは
シーゲル教授とは、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールで教鞭をとる、米国で有名な金融のスペシャリストです。
コロンビア大学を卒業し、マサチューセッツ工科大学で経済学博士を取得。ウォールストリート・ジャーナル等のコラムニストをされたり、CNN等でコメンテーターをされたりしています。
「株式投資の未来」の前著「株式投資」で他の金融資産に対する株の優位性を示しました。
その後、具体的にどの銘柄を購入したらよいか投資家に聞かれたことが、「株式投資の未来」を書くきっかけになったとのことです。
そして2年がかりの徹底した広範囲の調査の結果「株式投資の未来」が誕生しました。
本記事におけるシーゲル教授の主張は「株式投資の未来」の内容を抜粋したものです。
シーゲル教授の主張
成長には罠がある
いきなりですがクイズです。
あなたは1950年の米国人だとします。スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー(石油会社)とIBM(ハイテク企業)のうちどちらかの銘柄を買い、配当は再投資して2003まで保有します。
当時、ハイテク企業はトレンドの最先端に位置し、ニューエコノミーなる言葉が盛んに用いられ、未来はばら色でした。
なお、両者の成長力を示す指標は次のとおりです。
出典:株式投資の未来
リターンは大きければ大きいほど良いものとします。あなたならどちらを選びますか?
先進技術は経済成長をもたらし、その恩恵にあずかれるはずだから、大抵の人はIBMと答えると思います。
しかし、実際は、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーのほうがトータルリターンは高いのです。
出典:株式投資の未来
この現象をシーゲル教授は「成長の罠」と呼んでいます。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
シーゲル教授は次のように語っています。
株式の長期的なリターンは増益率そのものではなく、実際の増益率と投資家との期待との格差で決まる。
出典:株式投資の未来
つまり、こういうことです。
IBMは高い成長性を有していた。
同時に、投資家からの期待も高かった。
だから、高い成長性ほどトータルリターンを上げられなかったのです。
一方、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーは投資家からあまり期待されていませんでした。
だから、そこそこの成長でIBMを上回るトータルリターンを達成できたのです。
投資家の期待は平均株価収益率(PER)で表せます。
出典:株式投資の未来
スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーのPERはIBMのそれの半分以下ですね。
なお、調査の結果、成長の罠は個別銘柄のみでなく、セクターや国レベルにおいても確認されています。
成長する企業、成長する業界、成長する国への投資の際は注意が必要ですね。
配当は大いに物を言う
またもクイズです。
1871年から2003年にかけてインフレ調整ベースで株式が生み出したリターンのうち、配当再投資の割合はどれでしょう?
1 10%
2 20%
3 30%
4 40%
決めましたかね?
実は四択の中に答えはございません笑
意地悪ですみませんね。
答えはなんと、97%なんです。
出典:株式投資の未来
このように配当はリターンの源泉なのです。
また、シーゲル教授は、配当は下落相場のプロテクターであり、上昇相場のアクセルだと言います。
下落した株を配当で買えば、さらに下落しても下落前より下落幅が小さくなりますね。
シーゲル教授は、ポートフォリオの価値下落を受け止めるクッションとなるこの働きを、下落相場のプロテクターと呼んでいます。
一方、配当により買い増した株は株価が上昇に転じれば、大きなリターンを生みます。この
働きをリターンのアクセルと呼んでいます。
ところで、企業と投資家の信頼関係は配当で結ばれます。
粉飾決算をしようが、会計のマジックで黒字と見せようが、配当金はごまかせません。
企業が設備投資をしても上手くいくかはわかりません。
出典:株式投資の未来
設備投資に熱心な会社よりそうでない会社のほうが、リターンが高いのです。
配当は都度課税されるから自社株買いのほうが良いという考え方もあるでしょう。
しかし、シーゲル教授によると、自社株買いは配当ほどあてにならず、中止される確率が高いとのことです。
なお、投資の神様であるウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが無配であることについて、シーゲル教授は、バフェット氏と同じくらい株主との間に近い関係を築けるのであれば、配当の意味はずっと小さくなるだろうと語っています。
シーゲル教授の推奨戦略
シーゲル教授の主張をまとめたいと思います。
- 高いリターンを得るには成長の罠には気を付けること
- 高いリターンを得るうえで配当は欠かせないこと
でしたね。
そして、シーゲル教授は上記の点を踏まえて、市場平均を上回るには次の戦略を推奨しています。(他の戦略もあります。)
高配当戦略
配当利回りが高いということは株価が適正水準を下回っていることが多く、配当により株を積み増せばリターンアクセルが働きます。
出典:株式投資の未来
S&P500銘柄を配当利回りに従って5つのグループに分けて、リターンを計算したものです。
表からわかる通り配当利回りが最高のグループはS&P500のリターンを大きく上回っているのに対して、配当利回りが最低のグループは下回っています。
セクター戦略
シーゲル教授の調査の結果から長期的な勝ち馬(米国における)として、3つのセクターが浮上しました。
出典:株式投資の未来
ヘルスケア、生活必需品、エネルギーです。
ヘルスケアと生活必需品はそこまで高くないPERとブランドによる国際的な競争力の強さによって、エネルギーについては控えめなPERによってリターンがもたらされたと分析されています。
低PER戦略
仕組みは高配当戦略とよく似ています。
出典:株式投資の未来
S&P500銘柄をPERに従って5つのグループに分けて、リターンを計算したものです。
表からわかる通りPERが最低のグループはS&P500のリターンを大きく上回っているのに対して、PERが最高のグループは下回っています。
HDVとSPYDの組み合わせは高いポテンシャルを持つ
いよいよ本題です。
HDVについて
HDVとは、金融の専門家が激戦した米国の75銘柄で構成される高配当ETFです。
高配当ETFなのでリターンの源泉はばっちりですね。
HDVの詳細についてはこちらの記事をどうぞ。
結論から言うと、セクター戦略と低PER戦略に近似しています。
HDVのセクター比率は、ヘルスケア、エネルギー、生活必需品が上位に来ることが多いです。
直近のセクター比率は次のとおりです
また、PERについて、S&P500に連動するSPYが23.26に対して、HDVは16.84なので低めです。(2020年6月25日時点)
SPYDについて
SPYD とはS&P 500のうち、利回り上位80銘柄を均等に保有する高配当ETFです。
高配当ETFなのでリターンの源泉はばっちりですね。
SPYDの詳細についてはこちらの記事をどうぞ。
結論から言うと、高配当戦略と低PER戦略に近似しています。
先ほど紹介したとおりS&P 500のうち配当利回りを基準に5つのグループを分けた際に、配当利回りが最高のグループのリターンが一番高かったですよね。
5つのグループにわけたということは、配当利回りが最高のグループはS&P 500のうち配当利回りが高い順に選んだ100銘柄で構成されるということです。(500×20%=100)
繰り返しますが、SPYD とはS&P 500のうち、利回り上位80銘柄を均等に保有する高配当ETFです。
かなり似ていますよね。
因みに、シーゲル教授は高配当戦略において、ダウの犬戦略やSPYDの犬戦略でも良いと言っていることから、銘柄の均等保有について肯定的です。
また、REITについても肯定的です。SPYDは構成銘柄にREITが入っていることからこの点でもシーゲル教授の主張に合致しますね。
PERについては、SPYが23.26に対して、SPYDは13.71なのでかなり低いです。(2020年6月25日時点)
組み合わせについて
こちらの記事で紹介したとおり、HDVとSPYDの銘柄はあまり被っていません。
一方で、シーゲル教授の言う戦略に近いものがあります。
つまり、HDVとSPYDの組み合わせは、分散を効かせながら市場平均であるS&P 500のリターンを超えるポテンシャルを秘めているということです。
さらに、どちらもETFなので小額から、手間をかけずに実行できます。
要するに、簡単にシーゲル教授の教えを体現できる組み合わせなのです。
まとめ
- 高いリターンを得るには成長の罠には気を付けること
- 高いリターンを得るうえで配当は欠かせないこと
- セクター戦略、高配当戦略、低PER戦略が有効なこと
- HDVとSPYDの組み合わせはシーゲル教授の教えを簡単に体現できること
以上、本記事がお役に立てれば幸いです。