米国の配当株を集めたETF「SCHD」と並んで、収入を重視する人が気にするのがJEPQです。こちらは毎月の分配を目指す米国ETF。ただ、現金を生み出す仕組みはSCHDとは違います。
正式名は「JPMorgan Nasdaq Equity Premium Income ETF」。JPモルガンが運用する上場投資信託で、一社の株ではありません。大型の成長企業の株を持ちながら、株式配当とは別の方法でも収入を得ています。
毎月分配という言葉から、お給料のように同じ額が入る印象を受けるかもしれません。でも、受け取る額は変わり、元本も保証されません。
最初に、数字の見取り図
| 項目 | 米国ETFのJEPQ |
|---|---|
| 運用開始 | 2022年5月3日 |
| 運用の狙い | 現在の収入を得ながら、値上がりも目指す |
| 分配 | 毎月の分配を目指す。金額・支払いは保証されない |
| 年間運用費用率 | 0.35%(総額・純額とも) |
| 過去12回をもとにした分配利回り | 11.56%(2026年9月30日時点、運用会社定義) |
| 30日SEC利回り | 11.56%(同日。別の計算方法) |
| 過去1年のトータルリターン | +19.45%(同日まで、基準価額ベース・分配等再投資) |
数字は2026年9月30日付の公式ファクトシートによります。基準価額は、保有資産から負債を引いた1口当たりの価値です。分配利回りは、値上がり・値下がりを含む運用成果ではありません。 表の用語と計算方法は、後ほど説明します。
配当だけでなく「権利を売る収入」もある
JEPQは、ナスダック100に含まれる企業を中心に株を選んで運用します。ナスダック100は、米国ナスダック市場に上場する大型の非金融企業を中心とする指数です。指数と同じ動きをそのまま目指すインデックスETFではありません。
収入のもう一つの柱が、コール・オプションを売って受け取る代金です。コール・オプションは、一定の条件で対象を決められた価格で買える権利。その権利を相手に渡す代わりに、「プレミアム」と呼ぶ代金を受け取ります。
ざっくり言えば、値上がりしたときの取り分の一部を相手に渡して、今の収入に換える仕組みです。会社が利益から払う配当だけを集めているわけではありません。
JEPQでは、この仕組みをELN(株価連動債)という金融商品に組み込んで使います。銀行などが発行する、指数の値動きとオプション取引を組み合わせた契約です。2026年11月1日付の目論見書では、純資産の最大20%までELNに投資できるとしています。20%はELNの保有額の上限で、オプション取引の規模を表す割合ではありません。
現金の代わりに、受け取りにくくなるもの
株価が大きく上がる場面では、権利を売らずに株を持っていた方が値上がりを多く受け取れることがあります。JEPQも値上がりを目指しますが、上昇の一部を取り逃す可能性がある商品です。
一方、受け取ったプレミアムは下落の負担をいくらか和らげることがあります。でも、下げ幅がそれを超えれば損失になります。毎月お金が入っても、保有資産が減ることはあります。 値下がりを止める保険ではありません。
ELNには株価とは別のリスクもあります。発行した銀行などが支払えなくなる信用リスク、売りたいときに売れない・値段を付けにくいリスクです。目論見書では、そのELNへの投資額をすべて失うほどの損失もありうると説明しています。
「11%台」を、そのまま来年の収入にしない
公式の「12-month rolling dividend yield」は、直近12回の通常の収益分配などについて、各回の分配額を、その権利落ち日の基準価額で割った割合を足す計算です。権利落ち日以降に買っても、その回の分配は受け取れません。過去1年の分配金合計を今日の購入価格で割ったものとは異なります。
30日SEC利回りは、過去30日間の純投資収益を共通のルールで年率に換算する指標です。今回は同じ11.56%でも、過去12回の分配利回りとは別物。実際の支払額や今後の収入を保証しません。
また、直近1回の分配額を12倍した表示は、その回と同じ額が続くと仮定した年率換算です。すでに受け取った1年分でも、決まった年間配当でもありません。
トータルリターンは、値動きと分配を合わせた運用成果です。表の+19.45%は、分配等を再投資した場合のドル建て・費用控除後の過去1年の値で、投資者の税金や売買手数料は含みません。分配利回りを、これにもう一度足すことはできません。 円で持つ人の成果には為替も関係します。
SCHDとは、収入の作り方が違う
SCHDは、配当の質や持続性を重視する指数に沿って株を持つ米国ETF。JEPQは、株を選び、オプションを組み合わせて今の収入を作るアクティブETFです。「高配当」という言葉だけで並べると、この違いが見えにくくなります。
| 見るところ | 米国ETFのSCHD | 米国ETFのJEPQ |
|---|---|---|
| 運用 | 配当の質・持続性を重視する指数への連動を目指す | 株式選別とELNを通じたオプション収入を組み合わせる |
| 収入を考える軸 | 保有企業の配当 | 株式配当とオプションのプレミアム |
| 上昇との関係 | 通常の株式投資として値上がり・値下がりを受ける | オプションにより上昇の一部を逃すことがある |
| 米国ETF自体の年間費用率 | 0.06% | 0.35% |
費用は2026年11月7日に各運用会社の公式資料で確認。表は米国ETFそのものの費用です。国内投信の費用は次の節で説明します。
米国ETFと「楽天・JEPQ」は別の商品
日本には、楽天・米国成長株式・プレミアム・インカム・ファンド(毎月決算型)、愛称「楽天・JEPQ」という国内投資信託もあります。運用会社は楽天投信投資顧問、購入の窓口となる楽天証券とは別の会社です。
国内投信は2025年8月14日設定、原則毎月15日決算、為替ヘッジなし。運用会社の投資対象一覧には、米国JEPQに加え、同種のUCITS ETF(欧州の制度に沿ったETF)も記載されています。米国ETFを直接持つ場合と、保有する商品・費用・分配額が同じになるわけではありません。
楽天証券の商品ページ(2026年11月6日更新)では、国内投信の信託報酬は年0.308%、投資先費用を含む実質的な信託報酬は年0.658%と表示されています。0.308%+ETF経費0.35%の概算であり、0.658%にETF費用を重ねて足すものではありません。その他費用は別です。
同ページでは国内投信のNISA成長投資枠・つみたて投資枠はいずれも「不可」です。
米国ETFのJEPQを扱う国内証券会社もあり、JTG証券の公式海外ETF一覧に掲載されています。取引条件は各社で異なります。NISAには毎月分配型などを除くルールがあるため、購入前に銘柄の対象口座も確認してください。
手取りと、毎月のお金との付き合い方
米国ETFの年0.35%の運用費用は、資産から間接的に差し引かれます。証券会社への売買手数料、売値と買値の差、円とドルを交換する費用まで全部込みという意味ではありません。
米国ETFを直接保有する場合と国内投信では、外国での課税や国内での税金・調整の扱いも異なります。公表利回りをそのまま手取りとは考えられません。円高になれば、同じドルの分配額でも円で受け取る金額は減ります。
分配はファンドの財産から出るため、その分だけ基準価額を下げる要因になります。特に国内投信では、購入した人の取得価額などにより元本払戻金(特別分配金)となる場合もあります。毎月の分配を、必ず利益から出るお小遣いと決めつけないことが大切です。
毎月の楽しみを増やしたい人と、値上がりや配当の成長を長く待ちたい人。同じ米国株でも、欲しいものは少しずつ違います。JEPQの現金収入には、上昇の一部や別のリスクとの交換がある。過去の分配や運用成果は将来を保証せず、この記事は購入をすすめるものではありません。
参照資料
確認日:2026年11月7日(日本時間)。米国ETFの数値は、特記以外2026年9月30日資料。

